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    時広 真吾
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    渡辺 久義
    渡辺 久義
    京都大学名誉教授

    「全ての問題の責任は私にある」という考え方

    ~弁解の後孫②~

     私が「弁解」という思考の習慣性について深く考えるようになった大きなきっかけは、「ホ・オポノポノ」に出会ったことです。もう10年ほども昔になるでしょうか。ハワイに昔から伝わる問題解決の手法を、ハワイの人間州宝と言われる故モナ・ナラマク・シメオナ女史がインスピレーションを得て改良して開発したものだと言われます。聞き慣れない奇妙な名前ですが、奇妙なのはそれだけではありません。その考え方も、一見すると実に奇妙なのです。

     「すべての問題の責任は、私にある」

     これがその基本概念です。

     すべての問題とは、どこまでの問題を含むのでしょうか。私が遭遇するすべての問題です。例えば、テレビを見ていて、たまたまどこか海外で起こったひどい事件を伝えるニュースを見た。すると、その事件は私の責任だというのです。

     見も知らない、行ったこともない外国で、知らない人が起こした事件の原因がなぜ私にあるのか。これはどう考えても理不尽で出鱈目な考え方に思えます。

     しかし、ちょっとこう考えてみましょう。実際、私が「これは自分の責任だ」と思える範囲は、大体どれくらいでしょうか。例えば、自分の子どもが学校で問題を起こした。こういう場合なら、「親としての責任」を受け入れることができるかも知れません。

     配偶者ならどうでしょうか。夫が妻を思いやってくれない、家事も手伝ってくれない、あるいは暴言を吐く。そういう夫の態度に対して「私に責任がある」と妻は思えるでしょうか。「それは夫自身の問題。あるいは、そういう育て方をした夫の親の責任」と考えるかも知れません。

     自分が勤めている会社が不祥事を起こした。自分の住んでいる町の役所が住民のためにうまく機能していない。自分の国が……、 自分の隣の国が……。
     これらは大抵、私たちが誰かと話すとき愚痴の種になるものです。そのように考えてみると、「これは自分に問題の責任がある」と思える範囲はかなり狭いことが分かります。

     ところが、ホ・オポノポノは「自分が遭遇するすべての問題の責任は自分にある」と言うのです。我々の実感からも、常識からも、大きくかけ離れています。

     どうしてこれほど非常識な考え方をするのか、手短に説明してみましょう。ホ・オポノポノによると、私たちは4つの「セルフ」から成り立っています。神聖なる知能、超意識、顕在意識、そして潜在意識です。潜在意識は地球創生以来のすべての出来事を記憶として抱え込んでいます。しかも、潜在意識は私だけのものではなく、すべての人、すべてのものと共有しているので、その中にある記憶も共有されています。そして、私が人生の中で遭遇するあらゆる出来事は、その潜在意識の中の記憶が再生されることによって起こると考えるのです。

     例えば、どこか見も知らない国の暴漢が異常な考えをして銃を発砲した。その暴漢は彼の潜在意識のいずれかの記憶が原因で銃を撃ったのですが、それと同じ記憶を私も共有している。それで私はその出来事をたまたま(のように)テレビのニュースで見るのです。

     私がその出来事に遭遇するには、ある重要な意義があります。その出来事に遭遇することによって、「ああ、私にはああいう出来事を起こす原因となる記憶があるのだな」ということに顕在意識で気づく。そのために遭遇するというのです。

     気づいて、どうするのでしょうか。気づいたら、その瞬間、謝るのです。「私の中の記憶が原因で、あんなことが起こってしまいました。ごめんなさい」。そして、「そのことに気づかせてくださって、ありがとうございます」と感謝する。

     この時、4つの言葉「ごめんなさい」「許してください」「ありがとう」「愛しています」を使うというのが基本的なメソッドなのですが、細かなことには立ち入りません。このような対応をする結果が重要です。気づいて、その記憶を手放し、消去することによって、私の記憶がなくなるだけでなく、その事件を起こした人からも同じ記憶が同時になくなってしまう。すると、同じ問題は2度と起こらなくなる。実に奇妙で単純な手法ですが、これがホ・オポノポノの概念の中核をなします。

     4つのセルフ、すべてのものが共有する記憶、単純な言葉でその記憶が消去される、そういうことが正しいとどのように証明されるのか。その妥当性を云々するのは難しいのですが、若干の説明は次回にします。

     私がこの考え方と手法に深く関心を寄せざるを得ない理由は、ただ一つ。「すべての問題に私が責任を持とう」という、大胆かつ愚かにも見える考えをもって、あまりに真摯に取り組むその姿勢そのものです。これは明らかに、「弁解の後孫」たる我々が思いもしなかった挑戦ではないでしょうか。

     責任を持つといっても、海外の暴漢を訪ねて更生させるという話ではありません。心の中で、「彼の問題を起こす私の中の記憶を謝罪します」と唱えるだけです。共有する記憶を通しての責任です。「なんだ、そんなことで何が解決するのか。唱えるだけなら誰でもできる」と思われるかもしれません。しかし、一度取り組んでみてください。実践してみると、決して容易いことではないことに気がつきます。

     自分の子どもの不始末なら、「自分の育て方に問題があったかも」と責任を感じます。ところが、配偶者になるとだいぶ違ってくる。ましてや、社会の不祥事や犯罪など、自分の責任として捉える習慣など我々にはないのです。「犯罪は犯罪者本人の問題であり責任だ」というのが、我々の常識なのです。この常識が、極めて強い力を持っていることに気がつくでしょう。

     カウンセラーがクライアントの相談に乗るとき、どう考えるでしょうか。「彼が抱えている問題は、彼の問題であり、彼の過去の生活から来ている」と考えて、対応します。「クライアントの問題の原因が、相談に乗っているこの私にある。だから彼が私のところにやって来た」などと考えるカウンセラーはふつういないでしょう。ホ・オポノポノはそれくらい、一般の問題解決手法と真逆なのです。

     実際「すべての問題が私の責任だ」と考えて生活すると、気が狂わないまでも、神経衰弱になりそうです。しかし、ホ・オポノポノの提唱者は、このように考える以外に、本当の問題解決の道はないと断言するのです。私も今では「そうだろう」と考えています。そのようにする以外、「弁解するアダムの後孫」という境遇から脱する道はなかろうと思うのです。
    (つづく)

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