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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    高橋 克明
    高橋 克明
    「ニューヨーク BIZ」CEO 兼 発行人

    初の女性国連事務総長誕生か

     潘基文国連事務総長の2期目の任期(5年間)は今年末で終わる。その前に次期事務総長を決定しなければならない。国連では不文律だが地域ごとの輪番制が機能している。それによると、次期事務総長は東欧諸国から選出されることになっている。

     候補者名は既に多く挙げられてきたが、国連初の女性事務総長が誕生する可能性が予想されている。米国でクリントン女史が大統領に選出され、国連で女性事務総長が生まれれば、2017年は文字通り“女性の時代”が到来することになる。

     世界の女性の願いが実現するかは不明だが、今回の次期事務総長選はこれまで以上にロシアの動向がカギを握っている。ウクライナのクリミア半島併合問題やシリア紛争で欧米諸国がロシアと険悪な関係である今日、ロシアが拒否権を行使して欧米諸国の支持候補者をボイコットする可能性が考えられるからだ。次期事務総長選出は予想外に難しくなるかもしれない。 

     事務総長は安全保障理事会が決定するが、今年は総会が一定の役割を果たし、候補者にヒヤリングできる点が新しい。

    オーストリア日刊紙プレッセ(3日付)は6人の次期事務総長候補者を挙げている。以下、それを参考に候補者を簡単に紹介する。

     ①スロベニアの元大統領(任期2007~12年)のダニロ・テユルク氏(63)。
     アナン事務総長時代に国連の政治補佐官に任命されるなど、国連外交で豊富な経験を有する。同氏にとって決定的なハンディはスロベニアが北大西洋条約機構(NATO)の加盟国という事実だ。ロシアのプーチン大統領はNATO加盟国出身の事務総長を拒否しているからだ。

     ②クロアチアのべスナ・プシッチ外相(62)。
     ザグレブ大学哲学教授などを歴任した才媛で、次期総長選には有利な点もあるが、選出されるチャンスは少ないというのが国連外交筋の共通の受け取り方。

     ③モンテネグロのイゴル・ルクシッチ外相(39)。
     同国が昨年12月、NATO加盟を申請しているために、ロシアの支持が得られにくい。年齢も39歳と事務総長としては若すぎる。

     ④マケドニア元外相スルジャン・ケリム氏(67)。
     第62回総会議長を務めた。イスラム教徒であり、非同盟諸国からの支持も得ているといわれる。そのうえ、マケドニアはNATO加盟国でもなく、欧州連合(EU)加盟国でもない。ロシアが拒否権を行使して拒否する恐れは少ない。

     ⑤国連教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長イリナ・ボコヴァ女史(63)
     国連外交筋では有力な次期事務総長候補者の一人と受け取られている。ブルガリアのソフィア出身。ユネスコが昨年、南京大虐殺文書を世界記憶遺産に登録したことから、同女史の名前は日本のメディアでも知られるようになった。ブルガリアはEUとNATOの両機関の加盟国だが、同女史はモスクワ国際関係大学を卒業するなど、ロシアとは良好な関係を持っている。問題は同女史が前社会党政権の支持を得ていたが、ブルガリアのボリソフ首相は同女史を事務総長候補に担ぎ上げるかまだ決定していないことだ。

     ⑥EU委員会副委員長(国際協力・人道援助・危機対応担当委員)のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ(62)女史。
     経済学者。ブルガリア出身。国連外交筋は次期候補者として最有力候補とみている。

     6人の候補者の中に3人の女性が含まれている。初の女性事務総長が誕生する可能性は決して低くない。もちろん、東欧諸国以外の地域から突然、有力候補者が出てくる可能性も完全には排除できない。明確な点は、事務総長は世界政治のメイン・プレイヤーである大国、強国からは選出されないということだ。

    (ウィーン在住)

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